週末版の米経済紙Wall Street Journal (WSJ)に、”Dow’s Big Rebound Can’t Erase Doubts” (ダウ平均は大きく回復したが、投資への不安は消えない)という興味深い記事を見つけたので読んでみた。記事の冒頭で3月4日(金)にアメリカの日経平均に相当するS&P 500株式指数が1,321.15の高値をつけ、リーマンショック後最安値を記録した2009年3月9日の676.53のほぼ倍になり、もう一つの重要な株式指数ダウ平均の方も、同じ期間6547.05から約86%上昇し、12169.88になったとの紹介があった。この意味合いを具体的投資商品で説明をすると、もし2009年の3月9日にS&P 500に連動するETFを100万円買っておけば(現在、東証にも上場している)、二年で倍の200万円に資産が膨らんでいたことになる。年平均に複利換算すれば、約41%のリターンであった。現在、定期預金しても年率0.08%とか、そんな時代に、米国を代表する企業500社の時価総額の重みつき平均に連動するETFを買って保持しているだけで(はい、あの澤上篤人氏の大好きなbuy and holdです)、年率41%の上昇。まぁ、なんとおいしい投資機会だったことか。しかし、おそらく私だけでなく、殆どの人がこれを逃した筈だ。

じゃ、2009年3月9日の金融市場の群集心理はどんなだったのだろうか? 月に一回第一金曜日米国東海岸時間午前8時30分に世界中の投資家が注目する米国経済指標の発表がある。英語でNon Farm Payroll (NFP)、米非農業部門雇用統計である。これはFX投資を少しでも体験された人はご存知だと思うが、この発表の直後に、為替、株価、債券など様々な金融商品の価格が激しく変動する。月に一度、この時だけ投資して食べているプロの投資家がいるぐらいのボラタリティを市場に持ち込むインパクトがある最重要経済指標である(ブログ主の理解は次のとおり。米連銀FEDの二つのミッションが物価と雇用の安定。この指標は後者の状況をもろに表す数字であり、この結果がFEDの米国金融政策に大きな影響を与えるため、全世界の市場が注目している)。
2009年3月の発表では(上図の赤)、その年の2月米国では単月でなんと726,000人もの労働者が失職したのである。この数字は、景気の二番底リスクを払拭する反転が起こった昨年10月から今年2月にかけての5ヶ月間で増加した労働者総数710,000人よりも多い労働者を一ヶ月で失ったに等しい。数字が公表されたのが2009円3月6日(金)、この悲惨な数字を週末に市場が十分に消化・理解して望んだ週明け月曜日が3月9日だった。この日の株式市場の様子を要約した記事を見ると、製薬メーカーMerckによる大型買収のニュースがあったにも拘らず、ダウは80ポイント(1.2%)の下落、S&P 500は7ポイント(1%)下落し、双方とも約12年ぶりの安値を記録したとある。記事の中から発言を引用すると、
“To the extent that you get some piece of good news, you could see a big rally. But right now every rally attempt is being met with selling.” 「普通なら株価上昇を呼ぶ良いニュースがあっても、今は結局売られる」
“Valuations are reasonably attractive outside of financials, but most investors are in defensive mode. They’ve seen too many losses and are sitting on the sidelines.” 「金融株以外は魅力的な株価になっているが、投資家達は防衛モードだ。彼らはあまりに多くの損失を経験したので、呆然と佇んでいるだけだ」
と、こんな感じである。投資の神様ウォーレン・バフェット氏の金言に、”We simply attempt to be fearful when others are greedy and to be greedy only when others are fearful.” があるが、この日は後者の典型的なケースだった。そう、全ての投資家が怖がって手が出せなかった。そして、まさにバフェット氏が言うように、この日greedyに株を買っておけば、二年後に価値が倍になっていたのだ。もったいない。
株式投資での必勝法は、この例で分かるように、投げ売りの時に買い、連日最高値更新というイケイケの時に売る、それだけである。それを実行できれば間違いなく勝てる。多くの人は、株が上がり続けている時に強気になって高値で株価を買い、周囲がパニックしている時に持株を投げ出し安値で売る。ゆえに必ず負ける。そう、とっても単純な話である。しかし、じゃ、いつが底でいつが天井なの? 投資英語に、”You can’t time the market”という言葉がある。誰もタイミングを予測できないというのである。たとえ、あのバフェット氏であっても。もともとは米国から来たのかもしれないが、日本語の投資格言に、「頭と尾っぽはくれてやれ」というのがある。これは前述の”You can’t time the market”の現実的対処法で、そもそも天井と底は分からないのであれば、その分は諦めても、確実に低値で買いを入れて、高値で売っておこうということである。

上図はダウ平均の過去5年の値動きである。底は2009年3月9日で。非常に急峻な底なので、やはり、誰もそこを予測出来ないことは明確である。しかし、目標を下げて尾っぽを捨てて9,000で買うとすれば(それでも35%の資産価値向上である)、赤線でつないだ期間ダウ平均は9,000以下であり、なんと約8ヶ月もあった。この8ヶ月の間であったら、買いは入れられた筈であっる。なんだか簡単に出来そうだぞ。
それでも出来なかった個人投資家が多くいたのは、個人的経験から述べると、その時、投資できるだけの手元現金が無かったからだと思う。要は、高値で掴んだ株を損切り出来ず、株の暴落が続き、売るに売れない状態にあったのではないかと思う。となると、パニック底で投資できるように、それなりの投資資金を手元に置いておく必要があるということになる。このことに関し一点注意すべきことがある。昔、邱 永漢という投資指南本をたくさん出版していた投資評論家が、「お金は眠らせていてはいけません。皆さんが寝ている間にお金に働いてもらいましょう」と貯蓄から投資への啓蒙をさかんに行っていたが、オポチュニティ・コストという問題がある。手元に現金を置いておくと、他の金融商品に投資して得られたはずの利益を獲得する機会を失ったという話である。確かに一理はあるが、今回のリーマンショックで、逆に投資をすると、価値が20%どころか簡単に半減する恐ろしさを知ったからには、やはり勝てる時に確実に投資できるように、手元に現金を置いておくのが正解だと思う。だから、上昇したら、頭(天井)は捨てて利確をし、手元資金にするのが勝てる投資手法なのだと、つくづく思う。あー、理屈は分かったな。後は、強い意志と大胆さを持って実行できるか否かだ。
参考)新生銀行が最近二週間定期という円預金を商品化した。二週間単位の自動継続で、途中で設定を変えれば、二週間後に解約できる。預金保険対象であり、元本は保証される。現在の利息も悪くない。絶好の買い場に備えて、手元資金を置いておく場所として好都合かもしれない。保証対象は最大1,000万円+利息で、新生銀行というリスクはあるが、二週間で抜けるので問題ないと思う。下記が商品紹介ページ。
http://www.shinseibank.com/powerflex/yen_2weeks.html